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九州・山口研究発表会レポート

「マスマリン」九州・山口研究発表会

2017年2月26日(日)
TKP博多駅前シティーセンター

第1回「マスマリン」九州・山口研究発表会




    報告項目
    [T] はじめに
    [U] 研修会プログラム
    [V] プログラム第1部
    『胃腸障害とピロリ菌』と『ピロリ菌を標的とした胃炎、
    胃潰瘍や胃癌の予防に向けての新しい治療薬の開発』についての概要

    [W] プログラム第2部
    『胃腸障害の店頭における治験例』についての概要と展望
    [X] 参考文献

[T] はじめに
平成29年2月26日に第2回アライアンスメンバーシップの会研修会を行いました。今回のテーマは、『胃腸障害とマスマリン』について発表して頂きました。 研修会の発表内容とパネルディスカッションの討論内容についての概略をまとめました。その内容に基づいての疾病治療の改善や健康維持に向けての“マスマリン”の新しい魅力について考えてみました。 薬局・薬店の先生に是非ご一読いただき、今後とも“マスマリン”のご推売をして頂きますよう宜しくお願い致します。


[U]研修会プログラム
第1部
『胃腸障害とピロリ菌』(13:10〜14:10・講演50分・質疑10分)
大分大学 医学部付属病院消化器内科
講師:沖本 忠義 先生

〈休憩〉14:10〜14:20

『ピロリ菌を標的とした胃炎、胃潰瘍や胃癌の予防に向けての新しい治療薬の開発』
(14:20〜15:20・講演50分・質疑10分)
九州大学 名誉教授 久留米大学 客員教授
講師:桑野 信彦 先生

第2部
『胃腸障害の店頭における治験例』(15:30〜16:55)
パネルディスカッション − 発表8分・ディスカッション45分
【座長】 ヘルシー武雄薬局 島原 丈敏 先生
【アドバイザリー】 桑野 信彦 先生  沖本 忠義 先生
【パネラー】
1.漢美堂薬局   池田 和美 先生(胃腸虚弱)
2.みどり薬局   金岡 みどり 先生(胃酸抑制剤)
3.二本木薬品   堀  理英 先生(ピロリ菌除菌)
4.なべしま薬局  田中 須磨代 先生(ピロリ菌除菌)
5.大信薬局黄金店 松野 玲華 先生(ペニシリンアレルギー)

[V]プログラム第1部(文献1参照)
1.ピロリ菌と分布
@1983年ウォーレンとマーシャルによって発見された、グラム陰性桿菌でらせん型の形態をとる微好気性菌である。
このことによってノーベル賞を受賞された[図1]。

[図1]

胃の内部は強酸性であるため、従来は細菌が生息できない。
しかし、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生して胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、 生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって胃の中で生息できる能力を獲得した[図2]。


【図2】ピロリ菌が示す形態と生化学的特徴
[図2]

A東南アジアでの感染率は、インド、タイ、中国、韓国、日本の順番で多い。
日本では、癌の死亡率胃癌は、第2位である。タイ、インドは、日本よりも感染率は高いが胃癌発症率は低い。
これは、ピロリ菌の株が違うからである。
日本人が持っているピロリ菌には、たんぱく質のcagAがあり、このcagAが胃癌発症に関与している。

2.ピロリ菌の感染経路と予防への取組み
@水系感染(ピロリ菌に汚染された水・食品を食した感染)
家庭内感染(離乳食などの口移しなどの幼少期における親との感染) 施設内感染(保育園、幼稚園、障害児施設など)や
医療機関感染(消毒の不十分な治療行為(内視鏡、歯科治療など))などが考えられる。

Aピロリ菌感染は、小児5歳までの免疫がまだ出来てない時に感染し、一生感染が持続する。
現在、佐賀・大分・鹿児島に於いて小・中・高校生を対象にピロリ菌撲滅を目指してピロリ菌検査を実施している。

3.ピロリ菌感染が関連する疾病
@ピロリ菌の感染は、胃炎を惹起し、
胃潰瘍十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)や胃MALTリンパ腫胃癌
特発性血小板減少性紫斑病などの消化管病変の発症原因であり、消化性潰瘍の再燃や増悪にも関与している[図3]。

[図3]


Aピロリ菌感染が胃癌発生の主たる要因であり、ピロリ菌非感染者には、胃癌発症のリスクがほとんどないことが明らかになってきた。

4.ピロリ菌除菌療法の現状 @ピロリ除菌の保険適用は、2000年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍から始まりましたが、
2010年には、胃MALTリンパ腫、ITP、早期胃癌内視鏡治療後胃に対する除菌治療が保険適用となりました。
A一次除菌療法としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤が処方される【図4】。
成功率は、90%近くあったが最近では、一次除菌率の低下が報告されている。
また、途中でやめてしまうと次の二次除菌には、移行できない。
B二次除菌療法としてPPI、アモキシシリン、メトロニダゾールを用いた3剤が処方される【図4】。
一次除菌不成功者に対して行われている。

[図4]

C二次除菌不成功者に対する除菌療法や、除菌療法に用いられる抗菌薬に対してアレルギーを示す患者に対する除菌療法は、まだ確立していない。

5.がんの治療法の進歩とがん予防の重要性

@現在までに100個のがん遺伝子15個のがん抑制遺伝子が明らかになりヒト遺伝子の障害による突然変異が癌をひきおこすことが明らかになった。
A外科療法、放射線療法と化学療法はがん治療の3本の柱である。
最近、がん化学療法はがん分子標的治療に加え新しい免疫療法の登場もあって飛躍的に進歩しつつある。
しかし、がんの発生を予防したり、初期がんの早期発見は最高のがん治療であり、極めて大切である[図5]。

[図5]


[W]プログラム第2部(文献1参照)
1.“マスマリン”の効用に関する報告 パネルディスカッションでの発表について薬局・薬店の先生方からの報告を表1にまとめている。
発表報告から“マスマリン”の効用について次のことに注目したい。
すなわち、ピロリ菌をはじめ他の多くの病原菌や細菌の仲間に対するマスマリンの抗菌作用についての研究成果から、 “マスマリン”の抗ピロリ菌作用は殺細胞性抗ピロリ菌抗生剤に較べて弱い。
マスマリンはその殺菌作用より寧ろ“静菌作用”(抗抑制作用)の方が強いと考えられる(文献2、3,4参照)。
しかし、ペニシリンアレルギーの症例にファモチジンとの併用で除菌できたことは注目に値する(表1参照)。
マスマリンに補完的な働きがあるとすれば大きな魅力である。
さらに、胃炎/胃潰瘍/胃癌手術後などにおける“マスマリン”(H2−ブロッカーのガスターとの併用も含む)が
主訴や症状を軽快すること
は特筆に値する。

表1マスマリン投与症例のまとめ−九州、山口地方の薬局・薬店の先生からの報告(文献1)

番号 患者年齢
性別
疾病と主訴

ピロリ菌の
有無
マスマリン投与後の効果 報告者
マスマリン 疾病や主訴

ピロリ菌除菌の有無
投与/日
1 30才
女性
膀胱炎 不明 単独−6球 軽快 不明 佐藤
残尿感
2 71才
女性
肺炎(真菌性)

不明

単独−12球 軽快

不明

島原
3 25才
女性
膀胱炎 不明 単独−9球 軽快 不明 池田
腹部痛み、残尿感
4 63才
女性
胃腸虚弱

不明 単独−6球 体重上昇 不明 池田
食欲なし、胃痛 軽快
5 49才
女性
胃潰瘍 単独−9球 軽快 不明 金岡
胃痛
6 65才
女性
胃潰瘍 9球+H2ブロッカー併用 調子が良い 不明 池辺
抗ピロリ菌3剤
H2ブロッカー
7 60才
女性

慢性胃炎

単独−9球 軽快 二本木
食欲がない
8 80才
女性
慢性胃炎 単独−9球 調子が良い 不明 田中>
9 72才
女性
委縮性胃炎 不明 単独(9球/日) 調子が良い 不明 伊藤
胃痛、もたれ
十二指腸潰瘍
10 65才
女性
胃癌−2/3切除 単独(12球/日) 軽快 中山
ペニシリンアレルギー、
胃痛ともたれ
11 68才
女性
胃潰瘍 単独(6球/日) 軽快 不明 岩部
抗ピロリ菌3剤併用
で副作用
12 57才
女性
委縮性胃炎 9球/日
+ファモチジン併用
治癒 松野



2.生体のホメオスタシスの維持は健康な毎日が極めて大切である。

 生体は外界からの様々な刺激にうまく対応しながら自律神経−内分泌系−免疫系の3つの柱で生体の恒常性が維持されていると考えられる[図6]。
【図6】ヒトは常に様々な外界からの刺激と調和しながら恒常性を保ち健康に生活している。しかし、その調和が破綻すると疾病にかかったり、健康をそこなう。
生体のホメオスタシス(恒常性)を自律神経系と内分泌系と免疫系を主な3本柱として互いに調和させヒトの健康が維持されている。


[図6]


しかし、その外界との調和が破綻した時に生体は健康をそこない疾病になる[図7]。


[図7]

ホメオスタシスの破綻の一つの大きな原因として“炎症”が緊密に関与していることが世界の注目を集めている(文献5)。
従って炎症を抑制することはしっぺいの発症予防や治療に大きく貢献できることが期待できる。
すなわち、このことは炎症をおさえることが疾病の予防や治療に大切なことである。
胃炎、大腸炎、肝炎その他多くの疾病やがんの発症に炎症が深く関与していることが最近の研究から明らかになっている[図8][文献5]。

[図8]


3.“マスマリン”の効用についての考察

1.マスマリンが示す抗炎症と抗細菌作用
マスマリンの効用について、この“生体のホメオスタシス”を維持することにプラスの効果があるのではないかと考えられる。
すなわち、“マスマリン”に含まれるスクワレン成分は自然ステロイドである。
この自然ステロイドの抗炎症作用はマスマリン作用の大きな魅力ではないかと示唆される。
スクワレン成分が示す抗酸化作用(活性酸素の除去を含む)やそれに伴う抗炎症が、マスマリンの示す効果に関与していることが示唆される。
抗ピロリ菌(静菌)活性また他細菌に対する抗細菌増殖活性を示すマスマリン効果についての研究報告は既に発表されている(文献2,3,4,6参照)【表2】。

【表2】ホメオスタシスの維持と期待される“マスマリン”の効用
病原微生物 マスマリンの効用 治療薬(抗生物を含む)
ピロリ菌 静菌と弱い殺菌作用 殺菌作用
他種病原細菌 静菌と弱い殺菌作用 殺菌作用
炎症反応 自然ステロイド作用 抗炎症作用



2.マスマリンに期待する悪玉菌に対する特異的抑制効果
生体内の胃腸内に滞在する様々な細菌種は生体の免疫系や防御系の働きに貢献している[表3]。

【表3】生体内に滞在する様々な細菌種
有用菌(善玉菌) 有害菌 (悪玉菌) 日和見菌
・ビフィズス菌
・乳酸菌
・ウェルシュ菌
・ブドウ球菌
・大腸菌(有害株)
・連鎖球菌
・大腸菌(無害株)
・消化吸収補助
・免疫機能向上
・感染防御
・腸内腐敗
・発がん性物質生産
・ガス発生
・毒素の生産
・健康時は何もしない
 体が弱ると悪さをする

特に口から肛門までの消化器系において、口腔内、胃内および腸内において細菌の生体防御や生体ホメオスタシスの保持のための働きは極めて大切である[図9]。

[図9] 口腔から肛門まで消化器系を担う臓器は、開放系で機能していることが大きな特徴である。その消化器系において常在細菌も含め細菌はヒトが生きるために大切な働きをしている。一方、毒素などをもつウィルスや病原細菌の増殖はヒトの健康をそこない疾病をひきおこすこともしばしばある

[図9]

潰瘍性大腸炎はしばしば殺菌性抗生物質などの不適切な選択で生じる疾病である。
最近バンコマイシンに耐性を示す潰瘍性大腸炎に健常人の便をガーゼで濾過し腸内に投与して治癒する報告が数多く発表され世界的に注目されている。
このことは腸内細菌叢の善玉菌と悪玉菌のバランスの保全が生体との恒常性を維持する上で重要であることを示している。
もし、マスマリンにそんな細菌叢と生体との応答をうまく制御して生体防御的に働く作用があるとすれば、マスマリンのこれからの貢献が大いに期待できる。
特に“マスマリン”がピロリ菌や病原性細菌に対して特異的、抑制的に働くことができれば、“マスマリン”の消化器系疾病の予防や治療に対して大きな貢献が期待できる。



[X] 参考文献
1)第2回アライアンスメンバーシップ研修会「マスマリン」九州山口研究発表会(2017.2.26)
2)谷口初美「マスマリン、マスティックの抗菌活性および抗マラセチア活性(H20年6月〜)」
  「マスマリン」九州山口研究発表会(マスマリンの新しい抗菌活性メカニズムと治療への応用をさぐる。)(2012.4.15)
3)宮本智文「マスティックの抗菌・抗真菌活性と活性成分」「マスマリン」九州山口研究発表会(マスマリンの新しい抗菌活性メカニズムと治療への応用をさぐる。)(2012.4.15)
4)T.Miyamoto et al.Chemical composition of the essential oil, Nat.Prod.BioProspect.4:227-231(2014)
5)Cancer,Principles&Practice of Oncology(2nd ed.)by Devita,Jr.,Lawrence and Rosenberg,Wolters Kluwer(2015)より改変
6)沖本忠義「胃腸障害とピロリ菌」第2回アライアンスメンバーシップ研修会「マスマリン」九州山口研究発表会(2017.2.26)



謝辞

本稿をまとめるにあったて、大分大学・医・沖本忠義先生、九州大学・薬・宮本智文先生、産業医科大学・医・谷口初美先生、九州大学・桑野信彦先生の研究のご指導とご討論に感謝申し上げます。
さらに、島原丈敏先生の司会もとでのパネルディスカッションでは、池田和美先生、金岡みどり先生、堀理英先生、田中須磨代先生、松野玲華先生からの貴重で有用な症例発表に感謝申し上げます。